これが本当に最後のお別れです。
してあげられる事も、これが最後です。
後悔しないよう、準備をして当日は朝9時に出発したのですが、
タクシーで先に自分を降ろすはずが、
親父が突如自分の都合だけで目的地を変更し、
自分を降ろす事が後回しになり、それによる時間ロスが発生。
ホテルの支払い、必要な買い物で、また駆けずり回り、到着が告別式ギリギリに。
ひと息つけたものの、汗が引かないまま告別式が始まりました。
祖母からは、またこんなに汗かいて。と言われてしまいました。
前日の通夜と同じ会場で何ら変わりもないのですが、
今日はどこが違う空気を感じました。
告別式です。もう母とお別れする事になるからです。
式は通夜と同じ、喪主からの焼香に始まりましたが、
ほぼ親族なので、すぐに終わってしまい、次は喪主である父の挨拶。
ずっと考えていたのを知ってましたが、あえて口出しせず、
本人が思う事を、思うままに伝えたらいい。そう思って見守ってました。
ちょっと無骨でしたが、シンプルで何とも父らしい言葉でした。
そして、最後のお別れをする為に、棺を移動し会場の中央に置く為、一時中断。
15分程で再び呼び戻され、母の棺は会場の中央に置かれてました。
司会進行の方から、
では○○さん(自分の名前)、このタイミングでご準備されてた事をお願いします。
そう言われました。
身だしなみ、メイクの直しの時間が欲しいとお願いしておいたのです。
通夜の時にも出席された母の友人からも言われたのですが、
もうちょっとメイク直してあげるのと、白髪を白髪隠しで隠してあげた方がいいよ。
いつもきれいにしてたんだから、このままじゃ可哀想だからね。
と、アドバイス頂いてたのと、自分もどうも、ファイナルメイクがしっくり来なかったので、
出来るだけいつもの母に近い状態で見送りたく、常日頃使っていた、
小さい化粧ポーチを持ってきてたのです。
そのポーチの中には、眉を描くペンシル?と、口紅がいくつか入ってます。
いつも介護施設行く時のドタバタで、口紅だの入れてあげたり、
持ち物の確認で、何度もそのポーチをバッグの中に入れて持たせていましたので、
その中には最低限のメイク道具は入ってることは知ってました。
ただ白髪隠しは、家になかったので、買いました。
まずは、白髪隠しを塗ってあげる事に。
然程時間がない事は解ってたので、慌ててしまい棺に液体を付けてしまいました。
また、しっかり塗ってるのですが、どうも色が付かなくて苦労しました。
母は、この1か月の入院中2回しか洗髪してもらってなく、
ここ10日程、洗髪もしてもらってなかったので、油分を含んだ頭髪が、
液体を弾いて色がなかなか定着してくれませんでした。
仕方ないので、頭髪は程ほどにして、メイクの方を直すことに。
薄くですが眉毛を描き、祖母には口紅を塗ってあげて下さいとお願いしました。
でも、祖母は、別れが近い為か、動揺してしまってうまく塗れないと、
途中で投げ出してしまったので、自分が塗ったのですが、
すっかりドライアイスで冷え切った母の体は、口紅も部分的に濃く付くだけで、
全体に伸びてくれません。最後は指で口紅をなじませてあげました。
冷え切った体に触れて、改めて死を実感させられた瞬間でした。
そろそろ。と声がかかったので、
旅立ちの身支度を終え、思い出の品物を棺に入れました。
まずは、一番似合うであろう、良く着ていたチュニックを母の体にかけ、
首元には、以前から持っていたエルメスのスカーフを。
そして、思い出の品物として、最近まで履いていた普通の運動靴。
介護施設で工作した物。バスツアーで一緒に行った清里の絵葉書、
熊のマスコットが縫い付けてある、ポッシェットなど。。。
それぞれをの品物を棺に入れる際、
これ好きだったでしょ。とか、
ここ一緒に行ったよね、楽しかったね。と
母に声をかけながら棺に入れました。
そして、次に花で母を飾り付けました。
式場にも花はあったのですが、当日は母の日と言う事もあり、
花屋に寄って、母に似合う花を選んで買ってきたのです。
葬儀屋さんからも、会場を花で飾るのは、一番コストが高くつくから、
気に入った花を買ってきて、それを棺に入れてあげるのがいいですよ。と言われていたので、
最後の母の日です。旅立ちに恥ずかしくないような花を必死で選びました。
このタイミング、そう母の日に葬儀なんて、親不孝なような、申し訳ないような、
そんな気持ちで一杯になりながら、恥ずかしくない花を選んだつもりです。
カーネーションは、珍しい色合いの薄いピンク系、
店頭で、はつらつと咲き、元気だった頃の母のような、オレンジ色のガーベラ、
あとは花の名前が解らないのですが、
店員が選び母のイメージに合うと判断した物をいくつか。
花も同じく、なぜこれを選んだか母に話しかけながら、棺の中に入れ母を飾りました。
本当は、好きなハナミズキを入れてあげたかったが、花屋では買えなくて諦めました。
買ってきた花で飾った後は、会場にある花も棺に入れました。
花で飾り付けも終了し、いよいよ出棺です。
その前に、最後のお別れを一人ひとりがしました。
喪主である父は、何度も、ありがとう。と言ってました。
そして次は自分の番。母に伝える事が出来る最後の言葉です。
あなたは立派は母親であり、時にはいい相棒、
そして時にはいい友人であり、俺の一番の理解者でした。
あなたを誇りに思います。もう苦しまなくていいからね。ゆっくり休むんだよ。
そして自分達の事を見守って下さい。あんたの子供で良かったよ。ありがとう。
もっとたくさんの事を伝えたかったのですが、
やはり、言える事はこれしかありませんでした。
全員が最後の別れをした後、父は位牌を、自分は遺影を持ち、とうとう出棺です。
母の棺の後に続きながら、今日もあれだけ汗だくになったのに、
溢れ出る涙は止まる事なく流れ続け、もう先すら見えないような状況で、
火葬場に向かうバスに乗り込みました。
つづく
通夜にて。ここまでしてくれる、母の友人の心配りに改めて感謝。 |
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